日本語の作文技術/本多勝一

ISBN:4022608080
読み終えました。とても勉強になりました。研究室のみんなに買ってもらえないか、先生(指導教官)に頼んでみようと思っています。
私の専攻は情報科学であり、特にソフトウェアとハードウェアの融合に興味を持っています。そして、私が所属する研究室も当然のように情報科学、特にハードウェアが専門です。コンピュータ系の論文を書くのにここまで日本語に気を使う必要があるかと問われると、分からないと答えるしかありません。しかし、私の通っている大学(院)では最低でも一回は英語で論文を書かなければなりませんので、この本は役に立つと思います。
なぜ英語で論文を書くのに日本語の作文技術の本が役に立つのかというと、敵を知るにはまず己を知れということです。私は常日頃から思っていることがありました。それは、アメリカ人が書いた英語論文よりも日本人が書いた英語論文のほうが読みやすいということです。もし普段使用する言語の背景が文章の中に存在したら、これは当たり前のことです。英語を背景としている英語よりも、日本語が背景として存在している英語のほうが日本人にとって読みやすいです。そういう意味で、文章には書いた人がネイティブとする言語の背景が存在すると経験上感じています。
さて、人はネイティブとする言語の背景の上で文章を書いてしまうと考えています。ですから、分かりやすい英語を書くには、英語の背景を持つことが必須です。しかし、日本で生まれ育った以上、いまさら英語の背景を持つことは難しいです。そこで出てくるのが、日本語の背景です。日本人がネイティブで持つ日本語の背景と、強制されて学ぶ英語の背景を対比させることで、英語の背景を強調した英文の書き方ができます。そして、それは何も意識しないで書いた英文よりも出来の良い英文になります。
ところで、ふだん母国語のことをあまり意識しません。ですから、日本人が日本語の背景に詳しいとはかぎりません。むしろ疎いぐらいです。しかし、この本の中のいたる所に日本語の性質についての記述が散りばめられています。それも抽象的な概念としてではなく、例文を使った肌で感じさせる書き方でです。ですから、この本を読み、日本語の性質を意識することで、より上手な英語を書けるのではないかと考えました。そしてこれが、私が所属する研究室のみんなにもこの本を読んでもらいたいと思っている理由です。