テレワーク(4)

全員出社禁止。

火曜日の夕方、NW回線が日々遅くなっていく状況にイライラしながらも、テレワークで仕事をしていたときのことだった。 首相の緊急事態宣言が発表されたとチャットに流れ、思わず仕事の手を止めニュースを見て、感想を言い合う。チャット越しとはいえ、みんなの感情の揺れ動きが手に取るように分かるとき、Teamsにて管理職全員の招集がかかった。

もともと、緊急事態宣言が出ることを見越して、火曜日の夜には何らかの追加対策方針が出されると聞いていた。 自分なりの対策案も考え、部長陣に提案する用意もできていた。 なので、心構えは出来ていて、よし、と思っていた。

最初はパワポ資料を使った月曜日時点の会社の方針の振り返りから入り、その後、慌てて作ったであろうメモ帳に記載されたテキストがデカデカと画面に表示される。 そこに書かれていた内容は、全員出社禁止、その6文字であった。

先週末時点で、プロパは既にテレワークで、出社は2週間に1度まで削減する計画を立てていた。 協働者のテレワーク準備も大方済んでいた。 だから、ある程度の強い方針でも現状と大きく変わらないだろうという予測のもとで、自分なりの対策案を立案していたが、まさかの全員出社禁止に、声が出なかった。

そこからは、緊急事態宣言が一週間前のように感じられるほど、慌ただしい2日間である。 課長同士で連絡を取り合い、1ヶ月間出社禁止となった場合の業務への影響を一晩で整理し、上司や他チームへと説明し、アップデートされた情報から更に自チームへの影響を見直し、そして他チームへと展開する。 その合間に、協働者の責任者に順次事情を説明し、テレワークができる協働者とそうでない協働者の扱いの違いに対する対応や、支払いに関する話、今後の見通しなど、出して良い情報、出せない情報、プロジェクトの方針、自チームの方針、そして自分の考えを伝えていく。 その合間に、子供が保育園に通えなくなったから業務時間を減らしたいという部下の要望や、NW回線の遅延により打鍵誤りが発生し環境を壊してしまったという報告、同じくNW回線の遅延により社内のセキュリティルールを守っていたらチャット以外のコミュニケーションが全く取れないという現場の悲鳴を対処しつつ、リモデの画面を見ながらPCを操作するよりも、自端末をホストにして、共有された画面をスマホで見ながらマウス/キーボードを操作するほうが快適であることに気づき、スマホ画面を見ながらシンクラを操作して決算時期特有の様々な点検報告書を仕上げつつ、新年度固有の各種周知事項をボイスで社員に伝える。

課長陣はテレワークで済んだが、部長陣は、各フロアに待機し、誰かが出社したら追い返すという役目をこなしていた。 正直、大して給料に差がないのに、部長は課長に対する影響力以外の実行力を持たされずに責任だけ負わされて大変だと、仕事中、上司にボイスで雑談を振ったら、実行部隊を直接指揮する君たちに比べれば雑務がないだけ楽だよと言われ、いやいや、いま貴方の出社理由が究極的に雑務でしょと感じてしまい、返す言葉に詰まってしまった。

そんな感じで、7日の夜から数えて、48時間中、36時間は働いた。まさかテレワークで、在宅勤務で、こんなに働くことがあるのかと思うぐらい、緊急事態宣言の余韻を感じる暇もなく、久しぶりにガッツリ働いてしまった。 火曜日の午後には、NW回線が込みすぎて、「明日から早朝と夜間しか仕事しません」なんて冗談を言っていたのに、そんな余裕すらなかった。 テレワークだから、通勤時間がない分、睡眠時間が確保できているのが唯一の救いだ。 それでも、正直、緊急事態宣言が出たのが、今でも二日前というのが信じられない。 (4月7日だよね、6日じゃないよね。本当に、時間間隔がおかしくなってて、これを書いているときも、何度も何度もネットの記事の日付チェックした。さらに、日付の引き算方法を勘違いしているのではないかと、カレンダー見ながら、一日前、二日前と指差し確認してしまった。)

そして、この2日間の外出は、わずかに40分である。割合にして、1.4%である。コンビニ3回、そば屋1回。

外出自粛。

自分がまさか、こんな形で実現するとは思わなかった。

先程、進捗資料を書き終え、やっと休める目処が立ったので、今日初めての外出で買ってきた晩ごはんとともに、今、ビールを飲みながら、これを書いている。

それにしても、疲れた。

本当に、疲れた。