1+2=3 足し算に潜む迷宮

1+2=3―足し算に潜む迷宮
上の「プログラマの数学」に関連して,私が好きなタイプのコンピュータ系の本を一冊紹介します.
これは,1年以上前,TAの時間にS先生に紹介していただいた本です.S先生いわく,「タイトルだけで買ったけど楽しめた.いまのM君(私のことね)にちょうど良いと思うよ」とのことで,その足で売店に走って買いに行った本がこれです.
で,そのS先生とどうも趣味が合うらしく,S先生が面白い・良いと感じる本は大体私も面白い・良いと思うんですよね.いまさらながらに,S先生の下について勉強すれば,また違った自分がいるのかなと思うことがあります.きっと,技術・研究一本に突き進んで,まだ埼玉には戻ってきていないでしょう.
また少し話が脱線しました.
この本の内容は,「1+2=3」という当たり前すぎる計算を,様々なコンピュータサイエンスの観点から説明します.計算モデルとかの話です.
プログラマの数学」とは異なり,この本は,普通に定義とか数式とかが散りばめられています.「ありがたみ」があります.どのページを開いても,定義を見つけられるほど,いっぱいあります.
しかし,その間に挟まれている文章(平文?地の文?)が読みやすいのが問題なのです.「ありがたみ」があるはずなのに,ついつい読めてしまうのです.
話としては,全体で5部(+おまけ)あります.「集合」,「関数」,「論理」,「代数」,「コンピュータハードウェア」です.集合の出だしを引用すると,

集合(set)とは,要素(element, member)の集まりです.

こんな感じです.いきなり集合の定義から始まりました.まるで教科書です.
このように,この本は基礎となる定義から始まり,一つずつボトムアップで理論を展開していきます.普通なら眠くなりますよね.ここからがこの本の凄いところ.
本書では,話の内容を「1+2=3」に限定しています.だから,読者は
「とりあえずよく分からないけど,1+2=3に必要なことを説明しているんだな」
と思わせ,しかも最後にはきっちり「1+2=3」になることを示しているので,
「あ〜,さっきのはこういうためにあったのか」
と思わせるように仕向けられているのです.
また,本論は1+2=3で終えているのですが,全体の3分の1を占める付録が,また色々と雑多なネタを仕込んでいる.1+2=3のタイトルで,なんでペトリネットが出てくるんだという感じ.
まとめると,「ありがたみ」が溢れてるんだけど,その「ありがたみ」が分からなくても読み進めることができ,しかも読み終えたときにその「ありがたみ」の意味に気づくことができる.さらに,マニアックなネタも仕込まれていて,いろいろと想像させると.
どうも私はこういう良くも悪くもマニアックな本が好きだなあということで,先ほどの答えとさせていただきます.